▼先日のことだ、ある伝統工芸の写真集を制作するにあたって文字のデータを渡されたのだが、このデータが残念ながらWINDOWSの「一太郎」で作られたもので、しかもフロッピー・ディスク。

▼うちにはPCがMACしかなく、しかもフロッピー・ディスクのドライバーが無い。いや、あるにはあるのだが、もうとっくに死んでいる。せめて「WORD」だったら、MAC版の「OFFICE」で開けるのだが、それにしたってフロッピーが開けないのではお話にならない。

▼しょうがないので、G反田のサービス・ビューローに出かけて、文字原稿を印刷してもらい、その後でテキスト・データをMACフォーマットのMOに移してもらうことにした。

▼で、その間、待ち時間ができたので、近くのブックオフで暇を潰す事にしたのだが、掘り出し物には出会わなかった。

▼一冊だけ、教養文庫の近代世界美術全集というシリーズの11巻『近代建築とデザイン』があったので購入。

▼家に帰ってから、この本をパラパラとめくっているうちに、オスカー・ニーマイヤーが建設したブラジルの首都ブラジリアの写真に目が釘付けになった。

▼ニーマイヤーはル・コルビュジェの弟子で、帰国してからはブラジル建築界の中心的人物となり、1956年に始まった新首都ブラジリアの建設にあたっては建築顧問としてコンペを提案するとともに、最優秀となった師ルシオ・コスタの都市計画に基づき、ブラジリアの主要施設の設計を手掛けたという人物。

●<http://bokunari.tripod.co.jp/20011/text01.html

▼このブラジリアの最高裁判所から国会議事堂を眺めた写真が素敵なんだよ。お見せできないのが残念。

▼似たアングルの写真を探してみたけど、どこにもないなあ。

●しかし、<http://www.alfainter.co.jp/foto-bsb.html>や<http://www.brasil.co.jp/voar/voarbsb.htm>でそのニュアンスだけでもお伝えできるかもしれない。

▼思えば、私が最初にブラジリアの光景を目にしたのはジャン=ポール・ベルモンド主演の映画『リオの男』の中でだった。

▼そのとき、主人公は逃走劇のさなかにブラジリアの未来的な建築物の中を右往左往するだけであったのだが、これをビデオで見たときの印象は「新しい」というより、「ほんとに実在するのこれ?」ってかんじで、まんま60年代SF映画のセットという印象だったなあ。

▼とても人間が住む場所とは思えなかったし、事実、ブラジリアの無機質な空間だけでは人間はいたたまれないらしく、この超未来的な都市のまわりにはアメーバー状にカスバ的な遊び場が広がっていったらしい。

▼昼間はブラジリアで働き、夜はこのカスバで心を癒すというシステムだ。

▼このカスバ的路地裏の脇雑な空間を見たら、ニーマイヤーは腰をぬかすか、人間の弱さを嘆くか、いずれかだろうね。ある意味で痛快ですらある。

▼しかし、しかしだ。ニーマイヤーはそれほど人非人ではなかったらしい。

▼今年になってからNHKの何かのドキュメントをぼーっと眺めていたら、最近のブラジリアの風景が画面に飛び込んで来たのだが、これがまた、月日のたつのは早いもので、当時は埋められたばかりで貧弱だった街路樹が、立派な森になってきており、これがあの無機質なブラジリアかい?と思うほどに有機的な空間に様変わりしていたのだ。

▼もちろん、厳密に考えればコンセプトとしてはモダンの敗北ではあろうが、この樹木の中に埋もれかかっている建築物の美しさときたら、見てみたいというより、住んでみたいと思わせるほどだった。

▼ミスター・ニーマイヤー、恐れ入りました。

▼でもあいかわらず、住むにはまわりの猥雑な空間の方が快適らしくてさ、ブラジリアの通勤時間のラッシュときたら、これまた60年代の悲観的未来を描いたSF映画のように非現実的な混雑ぶりで、ちょっと世界でも類をみないほどの凄まじさをレポートしてたよ。

▼ミスター・ニーマイヤー。モータリゼーションの拡大を計算に入れてなかったんだね。


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