▼イーグルトンという人のシェイクスピアについての本を読みはじめたら、序文のところでいきなりモンティ・パイソンのことが書いてあったんで驚いた。

▼イーグルトンはむかし『クラリッサ』という本をわざわざ買ったのに、まるで歯が立たなかった記憶があるので、これは図書館で借りてみたのだが、モンティ・パイソンで始まるだけあって実に面白い本だった。くそったれめ。『クラリッサ』と取り替えてくれないかなあ。

▼そんなわけで、したたかな笑いの無差別攻撃をしかけていった彼ら、ほとんどロックスターのノリで過激なギャグをまき散らしていったあいつら、すなわちモンティ・パイソンはやっぱり永遠なのだ!と思ったりしたのだった。

▼<さて、つぎはまったく関係のない話題です>

▼これがモンティ・パイソンの決まり文句。この涼し気というか無節操というか、いーかげんなセリフを免罪符にして、つぎからつぎへと何の脈絡もないブラック・ジョークを連結し、破壊的なショータイムを興行していた英国紳士たち。

▼その名もモンティ・パイソン。コネディの世界ではすでにアンダーグラウンド・クラシックとしての称号を手中にしたはずの彼らであったが、さすがに最近ではその名を聞くことがなくなってきた。あのカルト・ムービー『未来世紀ブラジル』の監督としていきなりメジャーに躍りでたテリー・ギリアムがいたコメディ集団として、再び脚光をあびたことさえ既に遠い過去の話になってしまった。

▼クラシックになるとろくなことがないよね。バッハやベートーベンやワーグナーだって、ホントは若くていきのいい時代に作品を書いているのに、大御所になってからの、爺むさくなってからの肖像しかイメージないもんね。さぞやくやしかろう。

▼閑話休題。

▼確かにモンティたちがイギリスのBBC放送で初めて『空飛ぶモンティ・パイソン』を制作したのが、1969年だってんだから、もう30年以上も前のお話だ。

▼しかし、あらゆる権威を笑い飛ばすあの過激なギャグの連発は今でもちっとも古びてなんかいない。これも彼らが、当時の政治や風俗の安易なパロディに逃げたりしないで、まるっきりオリジナルな、まあ、いくらオリジナルっていってもワケわからなさすぎ、ってのも含めて、とにかくオリジナルなモンティ・ワールドを構築しているからなんだ。

▼(とは言うものの、彼らがビートルズをパロった『ラットルズ』という映画はパロディとしても傑作中の傑作)

▼さて、モンティといえば、<シリー・ウォーク>というギャグが有名で、これは、とにかく、ひたすらヘンテコな身のこなしで街角を歩く、という、ただそれだけのギャグなんだけど、この手の阿呆でかつ濃厚なギャグがしつこくしつこく繰返されるレギュラー・バラエティ・ショーの間に挿入される、テリー・ギリアムのアニメーションも、ナンセンスの丘の上で昼寝しながらふざけちらしている風情で、たとえば『羊のカポネ』という作品では、淡々と<羊のギャングスターの半生>を描いていて、何でまた羊なんだか、おおいに笑いながら、やがてしんみりとしてしまうのだ。

▼いずれにしても、たとえばパーティグッズとして場を盛り上げるにはもってこいのハイセンス・ユーモアから、人前で笑ったら人格を疑われること間違いなしの過激なギャグまで、豊富な品揃えでお待ちもうしあげているのがモンティたちの心意気。

▼でも彼らの<劇薬>は服用を誤りますと、社会復帰が遅れますので、取扱いには御注意。

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