▼『奥さまは魔女』が、ついに映画化される運びとなったらしい。

▼予想されるキャスティングは、魔女のサマンサ役にトム・クルーズの元妻ニコール・キッドマン、旦那様のダーリンに『オースティン・パワーズ』のマイク・マイヤーズ。

▼まだ候補の段階だそうだが、オリジナルと比べると、邪悪そうな魔女とドタバタが似合う旦那様の組合せになりそうだね。

▼それにしても日本の某自動車メーカーの広告ではとっくにリメイクされていたわけで、ハリウッドとしてはやや遅きに失したのではなかろうか?

▼いずれにしても、このドラマはアメリカと日本で同時に爆発的なヒットを飛ばした事で良く知られているわけだが、さて、このシリーズの魅力の源泉はと問えば、

「奥さまの名前はサマンサ、旦那様の名前はダーリン。ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。ただひとつ違っていたのはうんぬん」

と語られる、無責任きわまりないナレーションでも強調された、<普通>というキーワードにあるように思える。

▼何しろ、本国アメリカで放映されたのが1964年から1972年。

▼巷ではラブだのピースだのとカウンター・カルチャーの嵐が吹き荒れ、総ての価値判断が問われようとした激動の時代に、頑固なまでに50年代風のアメリカン・ウェイ・オブ・ライフを遵守して、かたくなに<普通の>アメリカ市民の幸福を披露しつづけた脳天気さにこそ、8年間にもわたるロングランの秘密があったのに違いない。

▼そして、そうしたアメリカの市民生活に憧れたわれわれ日本人にも、どうやらこのドラマの霊験はあらたかだったようだ。

▼たとえば日本における某電通、某博報堂といった広告代理店の全盛ぶりなども、あるいはこの『奥さまは魔女』というドラマが日本人の集合的無意識下に深く影響をおよぼした結果なのかもしれない、などと考えたりして。

▼そうとも。思えば、このドラマに登場する市民たちは、決して一般人などではなかった。広告代理店に勤務するダーリンを中心に、<広告界>をわがもの顔に闊歩するタフな連中であった事を忘れてはならない。

▼ダーリンの誠実そうな微笑の陰には、やたらにスポンサーへの営業を兼ねたホームパーティを開いては、いいかげんな広告プランのプレゼンテーションを繰りひろげるという奸計が潜んでいたのだ。

▼何しろ魔女をたらしこんだほどの実力の持主であるから、広告に関してはシロウトのスポンサーなどはイチコロである。

▼もちろん道化役を買ってでる上司のラリーの存在も無視する事はできない。彼が徹底的にスポンサーに媚びへつらう姿を見ると、ラリーの魑魅魍魎ぶりに思わず感嘆するしかない。

▼まったくの話、彼らに比べたら、魔女たちの方がよっぽど可愛げがあるのだから恐れいる。やっぱり、いたいけな日本の少年少女の心の隅っこに、広告という世界への興味がわいてしまうのも無理はなかったはずだ。

▼いずれにしても、サマンサとダーリンの素敵な郊外生活は脳天気なまでにアメリカしてて、冷戦下の世界情勢を鑑みてみれば、共産主義周辺諸国に対する、じつに見事な自由主義陣営からのプレゼンテーションでもあったはずだ。

▼さて、今、この時期に『奥さまは魔女』を映画化するという事の意味は、あるいはアメリカ合衆国が、どこかとの戦争終結後の世界戦略をふまえて、世界各地のイスラム文化圏周辺諸国へ向けての<愉しい民主主義生活>のプレゼンテーションの一環とでも考えているのでは?

▼なーんて事はなかろうが。いや、もしかして?

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